中国と日本のスマホゲーム市場の違いと現状 「Alibaba Cloud Gaming Event」第四弾を取材#5
アリババクラウドは5月29日(水)、「Alibaba Cloud Gaming Event」第四弾を開催。「中国市場と日本市場スマホゲームの違いと現状」をテーマに、トークセッションが行われました。
本稿では株式会社SHIFTの森昭生氏が登壇したセッション「中国と日本の市場 スマホゲームの違いと現状」の様子について紹介。ゲーマーの質・量の違い、日本のゲーマーの特徴などからトークを展開しました。
▲株式会社SHIFT 森昭生氏
2017年にPCゲームの売り上げをモバイルゲームが逆転し、2017~2018年のモバイル売り上げ増加率が38.5%と、急激な伸びを見せる中国モバイルゲーム市場。
その加熱ぶりはいくつかの事件に発展するほどだそうで、熱中するがあまりに、父親の銀聯カードを盗む、負けが込んで屋上から飛び降りる、40時間連続でプレイして意識不明になる……など。前述の例はいずれも青少年の身に起きたことで、アプリ側は年齢に応じてプレイ時間の制限をするなどの対策をしています。
また、日本と比べて子どもがモバイルゲームに対して課金をしやすい環境にあることも指摘。おこづかいが「Alipay(アリペイ)」などの決済アプリで与えられることも多く、6歳の児童でも課金に手を出しているケースがあるほど。
▲従来から人気のMMORPGやMOBAに加え、前セッションでも挙げられた二次元ゲームが増えています。
「中国モバイルゲーム市場はDAUによって支えられています」と森氏。人口が多く、ユーザーの熱量も高い中国市場ですが、ユーザーに飽きられてしまう、もしくはストアからプロモーションを切られてしまうと一気にセールスランキングが落ちてしまいます。
▲この事例では、クリスマス直前にしてプロモーションを切られた結果、好調だったセールスランキングが一気に200位も落ちてしまいました。
中国から見た日本市場との違いをまとめると以下のようになります。
・DAUは約10倍
・ARPPUは約15%
・課金率は10分の1
・ユーザーが離脱しやすい
・政府の審査が必要
・国外企業の介入がしにくい
続いて、中国で加速している“コンテンツの国産化”について説明。2015年頃までは、漫画・アニメなどを日本から輸入し、ゲーム化していました。しかし現在では、国内にクリエイターが増えたことで、一気通貫で国産化することが可能になったそうです。そのため、日本の作品を買う動きは抑えられるということになります。
森氏は「売り買いではなく、共同開発に切り替えていかないといけない」とコメント。中国の開発力、投資力に対して、日本の強みである作品の世界観やキャラクター、声優などの存在を生かして売り込んでいかないといけない、と語りました。
話題を日本市場に移し、日本の課金ユーザー1000人に聞いた課金額や、最近のトレンドを紹介。
▲5万円以上課金するユーザーを重課金者と定義。今回のデータでは1,000人のうち、64人が該当します。
そして、課金額別でトレンド分析をすると、どの課金者層にも人気のアプリもあれば、重課金者からは人気が落ちるものがあります。逆もまた然りで、重課金者層に人気のアプリも確認できます。
▲『戦国炎舞 -KIZNA-』はその特性が顕著に表れています。
また、次のグラフからは重課金者が1本のゲームタイトルを集中してプレイする傾向があると分かります。そのため、離脱した重課金者はほぼリテンションを見込めないと考えられ、離脱させない施策の重要性が高いことがうかがえます。
▲重課金者は生活費の50%以上を課金に費やしているケースもある。
アプリを始めるきっかけには、どの層に対してもSNSが有力で、次いでストア広告、好きな声優、IPなどのコラボ、そしてTVCMなどが興味を引くきっかけになっているようです。
アプリ継続の判断に寄与するのはどの層も、最初の1~2時間が山場になっているそうで、そこを超えると辞めにくくなるのだとか。重課金者は最初のガチャ結果を重視する傾向にもあります。
逆にゲームを辞めてしまうときの理由としては、単純に飽きてしまった場合はもちろん、運営の対応によるところも大きいようです。例として、新規ユーザー贔屓によって既存ユーザーをないがしろにしてしまうパターンや、CSの対応に不満を持つパターンなどが挙げられました。
先述の、重課金者は1本のゲームタイトルを集中してプレイしていることを裏付けるようなデータとして、他に面白いアプリを見つけたときの離脱が目立つところも見受けられます。
次のグラフからは、どの課金者層も全体的に戦闘システム、キャラの魅力、手軽さ、ストーリー性を重視してアプリを遊んでいることが分かります。特に手軽さの面は重課金者であっても切り離せない概念となっています。
セッションの締めくくりとして、「生体デバイスを使用した重課金者による第三者比較テスト」を紹介。内容は、日本でも人気を誇る『アズールレーン』と、売り上げが伸びていないタイトルを、集中や驚きを表す“覚醒度”を測ることが可能な生体デバイスを使用して比較したものになります。
コアゲーマーが両タイトルのチュートリアルをプレイし、覚醒度の動きがどうなっているかを見比べます。
結果は、『アズールレーン』はプレイ終了までに覚醒度の山が4つあり、プレイ中に驚きを与えられていることがわかります。対してもう一方のタイトルはプレイ終了までにほとんど山がなく、飽きられてしまっていると考えられます。このことから、良質なチュートリアルはプレイの継続にも繋がるのではないかと考えられます。
以上で全セッションが終了、中国と日本ゲーム市場の現状が確認できるイベントとなりました。成長を続ける中国市場ですが、厳しい審査等がある中で日中企業がどのように関わっていくのか、今後の動向にも注目です。
なお、会場には100名以上の日本・中国企業の関係者が集まり、イベント後は交流の場となりました。
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