ニュース

去る5月31日（金）、「黒川塾」第69回が開催。「黒川塾」では、毎回ゲーム業界に携わる様々な人物をゲストに招いて、有意義なトークセッションが行われるイベントです。今回のテーマは「ゲーム三冠王！ 岡本吉起と森下一喜の『ここだけの話やで…』 SNS投稿禁止Night」と、大変貴重な会となりました。

「黒川塾」主宰の黒川文雄氏を司会に、『ストリートファイターII』、『バイオハザード』、『モンスターハンター』などカプコンの大ヒット作を世に送り出した株式会社オカキチの岡本吉起氏、そして『パズル&ドラゴンズ』を手掛けたガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社の森下一喜氏を迎え、SNS禁止の“ここだけの話”が繰り広げられました。

記事化できない内容が盛りだくさんのトークイベントだったため、お伝えできる部分は少ないですが、本稿では抜粋してその模様を紹介します。

▲黒川塾主宰 黒川文雄氏

▲株式会社オカキチ 代表取締役 岡本吉起氏

▲ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 代表取締役社長 森下一喜氏

黒川氏がゲームづくりのこだわりを両名に問うと、岡本氏は「ゲームのゴールをあらかじめ決めています」と回答。「こんな社会現象を起こそう」というゴールから逆算し、そのうえで “ここは譲れない”というラインを定めているのだそうです。

森下氏も、始めに描いたコンセプトデザインと、タイトルのテーマ性を重要視。『パズル&ドラゴンズ』は“スマートフォンで遊べる簡単な操作性”をコンセプトに制作し、「ドロップ操作が上手いほど火力が上がる」というポリシーを守りつつ開発したと語りました。

またテーマ性では、「何がしたいか、どうブームを作りたいのかがキモ」なのだとか。森下氏は流行りもののアンチテーゼを作りたい、世の中の流れを変えたいという自身のテーマと、時代のタイミングがハマるかどうかが重要だと続けました。

長く開発が続くと、途中で迷走し始めてしまうこともあるのだそうです。森下氏は「コンセプトを保てずに違う方向性になったときは危険で、一度仕切り直さないといけない」と説明。また解決策として、ふたりで企画することを挙げました。ふたりで企画を固めてから落とし込むことで、ブレにくくなるとのことでした。

トークの終盤、参加者から会社の求人について質問が出ると、森下氏は「表向きでは新卒採用はやっていない」と回答。これは単純に採用をしていないのではなく「入りたいなら応募してくればよい」というスタンスのもと、あえて一般的な就職活動のスタイルをとっていないのだそうです。学歴などの情報よりも、本人のやる気が重視されています。

クラウドなど、新たなプラットフォームの出現するなか、森下氏は「10年後の小学生に『パズル&ドラゴンズ』が遊ばれているかが重要」だと語りました。アニメや携帯ゲーム機での発売など、次世代にIPを浸透させるために様々な手を尽くす必要があるとのこと。

岡本氏は「常に新しいことしかしたくない」と断言。自身をサッカーのポジションで例えるとFWで、点取り屋なのだと説明しました。10年後に向けてゲームを残すといった取り組みではなく、常に新しいことをやり続けたいと語りました。

最後にeスポーツに関する話題に移ると、「“eスポーツ”という名称が誤解を招いていることが多い」と森下氏。選手と観客が楽しめていればそれでいいのではないかという見解を示しました。

一方、岡本氏は「端的に言うと大賛成です」とコメント。往々にしてゲームにはネガティブイメージが付きやすいですが、eスポーツが認められることがあればポジティブな方向にスポットが当たっていくのではないか、と続けました。

なお、黒川氏はeスポーツ関連の書籍を6月20日に発売するそうで、とてもタイムリーな話題だったようです。曰く「eスポーツは新しいライブエンターテイメント」だと捉えていて、音楽業界でライブ収益が上がっているのと同様なのではないか、とのことでした。

会場では終始笑いが絶えず、しかしゲームづくりに対する熱い想いがうかがえるトークイベントとなりました。