ファン創出型マーケティングの最新事例についてディスカッション – Sp!cemart News

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ファン創出型マーケティングの最新事例についてディスカッション

イー・ガーディアンは、グループ会社であるトラネルと連携し、2019年8月8日(木)に「ファン創出型マーケティングセミナー」を開催。ゲーム開発者・販売会社を対象に、ゲームファン創出のノウハウを共有する目的で行われました。

 

前回記事の「『ラングリッサーモバイル』の成功とIPライセンスビジネスの未来」に続いては、業界の識者がパネラーとして登壇し、ファン創出型マーケティングの最新事例についてディスカッションしました。モデレーターを務めるのは株式会社medibaエグゼクティブプロデューサーの近藤塁氏。

 

 

ファン創出型マーケティング最新事例

▲X-LEGEND ENTERTAINMENT JAPAN株式会社取締役社長 陳建文氏

 

▲株式会社アカツキMarketing Guild General Manager 窪田真太郎氏

 

▲KLab株式会社 上席執行役員CMO 柴田和紀氏

 

今回のパネルディスカッションではアプリのリリース前から時系列順に、ファン創出のための施策を共有していきました。

 

・リリース前のプロモーションについて

 

柴田氏は日本での配信開始から3年目を迎えてもなお、好調を維持している『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』を例に挙げ、ゲームのモチーフである漫画『キャプテン翼』が40年近く愛されている作品であることを背景に、ファンを呼び起こすことに注力。LINEスタンプの配布などで、ユーザー間で思い出話に花を咲かせるような施策を実施しました。

 

陳氏は、マーケティングについて7割が「過去の成功例」、3割が「チャレンジ施策」として実施しているということを説明。それを踏まえて同社の『Ash Tale -風の大陸-』では、過去の成功例が少ないことから、7割をチャレンジ、3割を過去に成功した施策から実施したと続けました。

 

窪田氏は“ブランディング”を重視していると説明。事前登録を行っていたタイトルでは、クリエイティブのトーン&マナーを決めたり、CBTの招待ページの導入方法に謎解き要素を入れサプライズ的な要素も取り入れたり、運営チームのブランディングを重点的に実施しています。またCBTに関しても少人数で実施し、ファンコミュニケーションの場として活用することで、ファンと運営の関係性を向上させることを図っています。

 

・熱量の高いユーザーを離脱させないための施策

 

「残っている人に対して、如何に向き合うのか、のほうが重要」と窪田氏。離脱要因に対してすべては事前にカバーできないものとし、離脱する方に対しては広告や現金系キャンペーン等で無理に連れ戻すのではなく、残ったユーザーとのコミュニケーションを意識し、放送コンテンツ、SNSなどのコミュニケーションでロイヤリティを上げていくことを重要視しています。

 

陳氏も離脱してしまったユーザーが躓いた部分の改善を優先。大規模な広告ではリテンションが悪いことを懸念しました。

 

柴田氏はマーケティングの視点で重要なのは“ゲームに関するすべての体験”だとし、CS(カスタマーサポート)の対応や、そもそもCSに問い合わせをしなくても解決できるような体制が必要だと説明。そのためのコミュニティやオフィシャルの情報発信で、ユーザーの体験をより良いものにしていくことが大切だと語りました。

 

また、生放送で自分の名前を呼ばれる、といった特別なことをユーザー体験に組み込むことも意識しています。

 

・コミュニケーションには何を活用しているか

 

柴田氏は「公式アカウントだけではどうしても一方通行なコミュニケーションになりがちなので、そろそろ次のステップにいきたい」とコメント。公式SNSで情報発信をしているものの、双方向のコミュニケーションにはなっていないことを課題として挙げました。ユーザーの求めていることは問題解決以上にリアクションであり、同じ目線で共感を与えることが必要だと語りました。

 

陳氏はこれまでLINE、Facebook、Twitterと複数の公式アカウントを用意していましたが、情報のばらつきが出てしまっていたと振り返りました。そこでTwitterに集約することで良い成果が得られた、と説明。また、アンケートを実施し、一番意見が多い項目を改善していく方法をとっている、と続けました。アンケートにはインセンティブを用意し、回答を促進しているそうです。

 

窪田氏は主張性と共感性が大切になるとし、SNSの施策や、放送コンテンツで顔出しをするなど、運営陣のブランディングをすることでファンの方々とのコミュニケーションを図っているとのこと。また、内製のアンケートをつくり、チームに伝えていくことも行っていると説明しました。

 

他方、アカツキの『八月のシンデレラナイン』は2年目に大きく伸びたタイトルとして現在注目を浴びています。それまでのユーザーとのコミュニケーションについて聞かれると、窪田氏は「黎明期から続けてくれているファンに対して、放送コンテンツで運営メンバーのブランディングや、小規模なリアルイベントを実施し、“身近であること“や”ファンの方々の声を大事にする“ことを重要視してきた。」と回答。即時性のある施策よりも、リアルでの接点を多くするという投資を行ったと説明しました。

 

また、X-LEGENDの『Ash Tale -風の大陸-』では、全く無名タイトルだったにもかかわらず、日本でリリース後、早々に大ヒットを記録した。その背景について、MMORPGである『Ash Tale -風の大陸-』と競合する『黒い砂漠MOBILE』、『メイプルストーリーM』、『ラグナロクマスターズ』というタイトルとの差別化を考え、リアル志向の多いMMORPGというジャンルでは珍しい“可愛さ”要素を推し出すことで成功した、と陳氏。

 

柴田氏はKLabの事業戦略「Japanese IP’s」と「Global Growth」を実現しているのが『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』と『BLEACH Brave Souls』だとし、全体売上高に占める海外からの売上比率が高いレベルで推移していることを明かしました。

 

現在、『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』は日本語を含む9言語で展開しており、そのために各言語のプレイヤーとどのようにコミュニケーションを取っていくか、という課題が生まれた。その解決のための1つの方法として、自社で制作し配信している公式番組『KLab Games Station』の対応言語を徐々に増やしてきた、と説明。『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』におけるアラビア語圏での売り上げの高さにも触れ、毎週アラビア語の放送もしているそうです。公式番組は現在5言語で毎週放送をし、今後も対応言語数は増えていくとのこと。

 

また、今年はドバイ・フランス・香港でもリアルイベントを開催したことに関して、実際に社員が現地に赴き、ユーザーと直接コミュニケーションを取ることの重要性についても語りました。

 

・ユーザーの声を拾い、反映する手段について

 

窪田氏はTwitter上のサーチやCX担当のレポート、先述のアンケートなどから定常的な改善をしつつ、メディアミックスなどの節目毎に、十数名ほどのコアなファンから意見を聞くことがあると説明。

 

陳氏も基本的なところはTwitter、アンケートから情報を拾いつつ、メンテナンス後に匿名掲示板などで問題が起きていないか確認を行っていると明かしました。匿名掲示板では熱量の高いユーザーも多く、情報の早さから活用することがあるそうです。

 

「表面化していないことを理解する力がマーケターに求められている」と柴田氏。例えばQ&Aを用意しておくことで、問い合わせをしなくても解決できるようにしておくなど、表面化していない、ユーザーの行動の裏にある根本的な部分を理解して解決していくことが重要だとしました。

 

・成功した施策について

 

ひとつの施策、という“点”だけでは語れないという共通意見が3名ともにありつつ、窪田氏は『八月のシンデレラナイン』のアニメ化のタイミングにおけるプロモーション事例を挙げました。キャッチコピーの見直しやTVCMでの認知拡大からデジタル広告など、アニメ化にフォーカスして施策を複合的に打った結果、DAUが最大4倍にまで伸びるという結果になったことを説明しました。

 

陳氏はキャンペーン・イベントにおいて、施策をどこまで深く作るのか、どのタイミングで打つのかが結果に大きく関わるので考慮しないといけない、と語りました。また、事前登録をすべてアプリストア経由にしたことで、転換率が非常に高かったことを挙げました。

 

「“点”の施策ではなく、総合的なマーケティングコミュニケーションで大きな解決が求められている中で、投資回収という考え方はどう取り入れていますか」と柴田氏。たしかにマーケティングの幅が広がった結果、「経営的な視点でビジネスの成果をいつ判断するのか」が難しくなっています。

 

窪田氏は「会社のスタンスとして、オリジナルIPを成長させるための投資をすることに理解があるのは幸いだった」とコメント。そのうえで、目標値として年間および月間の売り上げ・利益とDAUを見ていると説明しました。

 

柴田氏も、短い期間だけで投資回収を考えてしまうとやりづらいため、成功による実績を作ることを目標として長期的にやり遂げることが一番重要だとしました。ユーザーだけでなく経営層まで巻き込んで同じ熱意で動くことがマーケターには必要であり、経営層も重要なマーケティング対象だと語りました。

 

「会社の方針として垂直立ち上げで取り組んだ」という陳氏は、IPタイトルではないため、認知度を上げるために事前登録期から広告予算に一番力を入れたとのことでした。

 

・運営、マーケティングで重視している部分

 

窪田氏は「どう見られたいか」というブランドの意識を重視。モノが溢れている昨今では、サービスがどういう世界観、人格を持っているかが明確になっていなければ、長く愛されるコンテンツにはならないため、しっかり主張できる設計を考えていると語りました。

 

「中の人たちがどう見られているかに関して、必要性を感じている」と柴田氏も続きました。タイトルを出し続けている企業がどう見られているかという観点は求職活動や新規タイトルのローンチ、ビジネス展開のあらゆる点において効果が出てくる、と説明。

 

また、社長が今年3月に交代し、来年にはKLabが創業20周年を迎えるというタイミングであるため、これからのKLabが目指すべき姿を社員全員が認識する作業を進めていると明かしました。

 

各社が以前ほどタイトルを出せなくなっている中、企業のイメージはこれまで以上に重要となります。

 

陳氏はゲームに対する理解を重視。コンテンツに関わる全ての人間にゲームをプレイさせて、強み、弱みや他社と比べたときの特徴などを理解することが重要だとしました。また、週に1回もしくは月に1回のペースでコンセプト会議を行い、クリエイティブ制作やゲーム運営が同じ認識を持っていると説明。そのため、大きくぶれることなくクリエイティブを社内で考えることができている、と続けました。

 

・これからの課題や展望

 

窪田氏は課題としてモバイル市場のマーケティングが成熟していないことを挙げ、著名なマーケターが挑戦しづらい状況を変えないといけない、と語りました。また、今後の展望として、ノウハウを極めていく過程で、新しいチャレンジをしていくと明かしました。

 

陳氏は中華圏のタイトルが多く出てきていることを挙げ、日本の国内に拠点を構えていないことから、日本の法律をほとんど守っておらず、そことどう戦っていくかが重要だと説明。サービス面やユーザーコミュニケーションにおいて、どう差別化していくのかが課題としました。また『Ash Tale -風の大陸-』がヒットしたことで規模が大きくなり、チームの増員を急いでいるそうです。今後、より多くの人にMMORPGを知ってもらうことを展望とし、自社の強みを生かしていきながら次のタイトルも出せるように整えていくとのこと。

 

長く愛されるタイトル運用が求められている中で、そのためのノウハウが多く共有されたセミナーとなりました。セミナーの最後にはネットワーク交流会の場が用意されました。

 

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