日常の体験から“おもしろい”を作りだすメソッド ディライトワークス主催「肉会(MEAT MEETUP)vol.12」を取材 – Sp!cemart News

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日常の体験から“おもしろい”を作りだすメソッド ディライトワークス主催「肉会(MEAT MEETUP)vol.12」を取材

ディライトワークスは、2019年5月17日(金)に中途採用を目的としたセミナーイベント「肉会(MEAT MEETUP)vol.12」を開催しました。「肉会(MEAT MEETUP)」では、交流やキャリア相談、情報交換が行える場が用意されています。12回目の開催となる今回は、ゲーム開発に携わるプロデューサー、ディレクター、プランナーを対象に「第5制作部キャリア相談会~ “おもしろい”をつくるコツ教えます~」というテーマで開かれました。

 

トークセッションに登壇するのは、ディライトワークス株式会社 第5制作部 ジェネラルマネージャーの東山朝日氏。1993年に株式会社ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に企画職として入社後、ゲーム開発に携わってきた経験から、“おもしろい”をつくる手法について話しました。

 

▲ディライトワークス株式会社 第5制作部 ジェネラルマネージャー 東山 朝日氏

 

 

“おもしろい”体験を分解する

トークセッションは東山氏から参加者に対して、質問を投げかける形で進行していきました。冒頭では早速、映画を観た、旅行に行った……などの「最近あったおもしろい体験」を聞き、東山氏がひとつひとつ「なぜおもしろいのか」を分析していきました。

 

たとえば、「『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』の展覧会に行った」という参加者の体験談から、作品の魅力について「公共交通機関は身近である」「変形してロボットになる」「少年が操縦している」などの“おもしろい”と感じる要素に細かく分解していきます。

 

また、「今まで奢られる側だったのが奢る側になった」という体験は自身の成長による「感慨深さ」が奥底にあるほか、「コストを支払う行為」は自分が価値を感じているものに対しては快楽体験のひとつになり得る、といったように考察します。

 

「人間は複雑な感情の機微で動いている」と東山氏。そして、人間がおもしろいと感じるものには、必ずそう思わせるだけの理由があるのだと続けました。だから、「なぜおもしろいのか」という理由を例のように分析・分解・抽象化し、それらを「仕組み」化することがゲームデザインのヒントになるのだと語りました。

 

 

「仕組み」をゲームに落とし込む

ここまでの話を踏まえ、東山氏が5つの実例を紹介。東山氏がおもしろいと思った体験が「仕組み」化されて、ゲームが制作されているのだそうです。

 

  • 映画を観て

映画にあるシーンのハラハラ感から「カットバック」(異なる場面を交互に繋ぐことにより臨場感や緊張感を演出する技法)に着目すると、以下のようになります。

 

▲東山氏が手掛けた『エースコンバット2』のとあるミッション。

 

味方の輸送機が墜落し、救出のためにプレイヤーが敵部隊と戦うことになるミッションですが、気を配るべき対象が多く、目まぐるしく状況が変わることで「カットバック」の手法に近い状態が出来上がります。

 

「映画の内容を抽象化し、おもしろさのエッセンスだけを取り出している」と東山氏。

 

  • バイクに乗って

バイクに乗る趣味がある東山氏は、狭いところを通る「スリル」感、排気量の違いによる乗りこなしを「制御する楽しみ」として仕組みを抽出し、以下のように落とし込みました。

 

▲『エースコンバット』シリーズ恒例の峡谷面。

 

狭所を高速で通り抜ける「スリル」を味わえる峡谷面は、プログラム的には例外処理が必要になってくるため、それ単体では制作コストがかかりすぎてしまいます。そこで、性能が違う機体バリエーションとして加えることで「制御する楽しみ」が体験できるようになると同時に、コスト面をカバーさせています。

 

  • アニメーションを観て

“某ロボットアニメ劇場版”の最終決戦には、ヒロインの歌に合わせて一斉攻撃をかけるシーンがあり、相当に盛り上がったのだそうです。そこから、「感情と演出の同期による高揚」を仕組み化すると以下のようになります。

 

 

敵基地の唯一の弱点を狙い、少しの間だけ開放される基地放熱口に突入、破壊するというミッション。味方地上部隊が基地放熱口を開くまでは「旋律の一定しない陰鬱な曲」が流れ、突入時は「勇壮なマーチ風の曲」が流れるという演出が用意されています。

 

1ミッションに2曲使うのは当然コストが掛かります。しかし、理性的に仕様書を書き、スタッフにお願いすることで製品の品質を上げようと心掛けた、と東山氏は振り返りました。

 

結果、BGMの変更という演出を付加したことで「高揚感」が生まれる仕組みが出来ています。

 

  • 落語を聴いて

笑いは緊張の緩和から生まれるという名言から、「緊張の緩和」をトリガーとする心の揺らぎを仕組みにすると、以下のようになります。

 

 

高度制限があるミッションで、一定のところまで耐えると敵基地に強襲が掛けられるという内容になっています。敢えてプレイヤーが飛べる高度に制限を設けることで「緊張」の状態を作り出し、最後に強襲成功という「報酬(=緩和)」の体験があることで悦に入ることが出来る仕組みです。

 

基地到達の際の達成感を最大化するため、その直前に山を配置して目隠しにしたり、一面を氷原にすることで視覚や時間の間隔を麻痺させたりするなど、さまざまな面で緊張を高めるためのつくりになっています。

 

  • 任侠ものの作品を観て

悪役が一旦は暴れまわり、最後に正義側が勝つという王道のストーリー構成から、「ストレスとその開放による高揚感」という仕組みを抽出すると以下のようになります。

 

 

▲「機動戦士ガンダム」を題材にしたゲームを例に。

 

1度高性能な機体に乗った後、意図的に性能の低い機体に乗り換える場面を作ることで「ストレス」が適度に付加され、改めて高性能な機体に乗った時の高揚感を醸成するという流れです。

 

ちなみに、高揚感を逆手に取って油断するような仕掛けを作り、原作と同じシチュエーションへと誘うといった二段構えの遊びも作られています。

 

 

“おもしろい”は日常に溢れている

東山氏は「“おもしろい”という感情をつくるためのヒントは日常の生活に溢れています」とコメント。日常のなかで起きることを観察力、洞察力を総動員して掘り下げることが重要だと続けました。

 

そのために「感動の収集」→「なぜの習慣化」→「抽象化」という3つのステップを説明。心動く体験を多く積み、なぜおもしろいと感じたかを考える習慣をつけ、その理由を要素として抜き出して仕組み化するという流れを説きました。

 

▲東山氏が実際につけているメモの例。今ではスマホに置き換えていることもあるそうです。

 

最後に「以上のことは皆さんのゲームデザインの仕事に必ず役立つと思います。」とセッションを締めくくりました。

 

この後、参加者には肉料理が振舞われ、交流の場となりました。

 

 

東山氏は2019年5月29日(水)の「DELiGHTWORKS Developers Conference Vol.6」にも「お客様の欲求を探るワークショップ」というテーマで登壇予定です。また、2019年7月に「肉会(MEAT MEETUP)vol.13」の開催も決定しています。詳細は「Peatix」上で公開されるとのことなので、チェックしてはいかかでしょうか。

 

 

「DELiGHTWORKS Developers Conference Vol.6」お申込みはこちら

 

 

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